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あの抗郷

ブライエニィは締めつけてくる麻の感触を知る。
チクチクと頑丈な縄が彼女の皮ふに食い込み、あごを上に向けて引っ張っていく。

誤解なのだ。
そしてそのことを死んでいるレディ・ストーンハートに伝えるには死者のことばだけが有効だった。

この閉鎖的な空間では、私的な友情や孤独な仕事で個人的自由が確保されているかもしれない。しかしそれは彼女には、湿ったカビくさい身内の会話が交わされているだけのように感じられた。そこには一瞬たりともあらゆる色調の光を含んでいる太陽の光はさしこんでこなかった。

死者のことばではダメなことはわかっていた。
公的な空間にそれ自体を開くことばがなけりゃ意味がない。
彼女は必死になってそのことばを見つけ出そうとしていた。

同じように吊るされ死へ向かっている隣の男のねじれた体を目にして、彼女の口が開いていく。
ブライエニィは苦労して息を吸い込んだ。
彼女を窒息させようと締めつけてくる縄にさからって自分の体に命令した。
こんなに身にも心にもきつくこたえる状況はいままでなかった。

まわりを死者たちに囲まれ、喉の奥からあることばが叫び声となって響いた。



引用;A Feast for Crows, George R. R. Martin, bantam books, 2005.11

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