So-net無料ブログ作成
検索選択

あの豹電

あなたの声は彼らに聞こえません。

どんどんあなたの意志も聞かずに、ベルトコンベアーの上にのせられた製作中の機械に行うように、既成のマニュアルにそったいろんな操作を彼らはあなたに次々と与えます。そう、ほどこしを与えるように行うのです。あなたの懐かしい思い出は取り上げられ、それと引き換えに、あなたが見たこともなかったような断片の記憶が加えられ、何度も何度もくりかえされるうち、とうとう以前の自分はどこに行ってしまったのだろうという感じがしてきます。前後の脈絡がなくなり、現在の自分と今まで生きてきた人生の関連がわからなくなります。どこか秘密の隠れ場に逃げ込もうと思っても、すぐに見つかってしまいます。

自分の心がけ次第で自分のまわりのものごとがいいものに変化する、たとえば笑いながら作った氷の結晶はニコニコした顔をしているとか、そんな考えが何の役にもたたないことがわかってきます。自己責任なんて人に向かって言ってる人間がいちばんうさんくさいんですから。なんでも人のせいにする人ほどそういうことを言うんです。

暴力です。そういう暴力は精神的なダメージを与えます。あなたの生きがいだったものがすべて取り上げられ、なくなってしまっているのに気がつくでしょう。そうなったらもう、たしかに生きている意味がなくなってしまいますよね。わかります。生命の危険を感じるのは当然です。だんだん追い詰められて行くのが自分でもわかる。だから、ひょっと浮かんだ自分の個性的なアイデアを元に、自分をとりもどそうと、直接的に世界と関係を持とうとします。

以前なら原色のペンキをぶちまけるというような表現手段もありました。
そういう間接的なコミュニケーションは現在、無効です。
それは相手の感受性に信頼を置いている人がすることです。
何度も言いますが、あなたの発することばは彼らに聞こえないのです。
だから、物理的な暴力をふるう人がでてきます。
でも、そうなったらむこうの思う壺になってしまうのですよ。
彼らはそれを狙っているのですから、そんな手にひっかかってはいけません。
みごとに抹消されてしまいます。

まず落ち着いて、彼らのいいなりになっているような振りをしてやりすごしましょう。
彼らは自分でエネルギーを作れないゾンビのような生き物です。
人から直接エネルギーをとらなければ死んでしまうのです。
自分が作ったものでないものを、受けたたときの状態そのままで繰り返しているだけの生き物です。
自分がたまたま見つけたエネルギーを守るために、それを打ち消すエネルギーの存在は許しません。
哀れみの目を持って接しましょう。

彼らの多くは消化する力も吸収する力もないので、与えられたエネルギーを消費するといったほんとに単純な人生しか送っていません。
あなたの目の前には彼らが見捨ててしまった原材料が無数といっていいほどあるのです。それらひとつひとつを味わい、何度も咀嚼して自分の身にすればあなたの心身は頑強になり、どんなことでも対処することが可能になるでしょう。

彼らはそれら原材料を表面的にしか見ていません。
あなたは、それらの中に潜んでいる深い叡智をみつけるでしょう。
内側を磨いていくことです。

あなたの声が聞こえない人たちに期待しないことです。
しかし、生きることにあきらめてはいけません。



引用;認知症と共に生きる人たちはどんなケアをもとめているのか,永田久美子,ケアされること,岩波書店,2008.8.26.

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。