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あの我臭

ビジネスのレベルじゃどっちでもいいと思ってる。個人のレベルならふさわしくないほうが勝つのは見たくないんだ」彼は一息入れた。

「ずっと前に--飢えた子の前でハンガーストライキは有効か--という冗談を言って顰蹙されたことがある。おなじようなことなのかもしれないけど」

意を決したように彼はジャスティンに向けてことばをしぼりだした。

「たとえば、命の尊厳を教えよう、ということで鶏の解体を子供たちの前でみせている人たちがいる。教育の名前で鶏の命が本来と違った意味を与えられて消費されてるわけだ。--あなたたちが、ニコニコしておいしいおいしいと食べているチキンはこうして作られているのですよ。大切な命をわけてもらってありがとうの感謝の気持ちをわすれちゃいけませんよ--とかなんとか」

「悪いとは言わないよ。それこそ、ビジネスのレベルならどっちだっていいんだ。でも、ときどきそのメッセージを個人のレベルで誤解してしまう人間が出てくる」

「自分が生きるエネルギーを他から取り入れる。そのとき手に入れた材料を所持することが法律に触れるとわかったときに、消費して解体し、この世に残った残渣をトイレに流したり、指定された袋に詰め込んでゴミの日に出したりする。その間、彼はきっと感謝の念をもって行動していたと思う。自分で言っていてもおぞましいことだけど、そういう人間が増えていると思うよ」

ギタは対立している2人から無言で顔をそらし、自分の前腕の中に埋めた。

「どこでまちがっちゃったんだろう?」

ジャスティンの声が暗闇の部屋にむなしく響いた。



引用;The Constant Gardener,John Le Carre,Scribner,2001

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