So-net無料ブログ作成

あの小熊

彼は机に座ってその本を開いた。目当ての箇所を読む彼の唇が動く。しばし間をおいてポケットから指定されているものを取り出し、机の上に並べた。

最初のものは古いしわだらけのコダックの写真だった。彼とその動物が写っている。動物は檻(おり)の中でノンキそうに両手で笹を握って食事中だった。彼らはカメラにむかって内気そうに微笑んでいた。2つ目は血液のはいった小さなビンだった。裏通りの野良猫をつかまえ、自分のポケットナイフでのどを切り裂いたのだ。3つ目はポケットナイフ。最後に黄色い僧衣の一部。トランジットで滞在中にインタビューに答えた空港内の会議場のイスに引き裂かれたそれが残っていた。盗んできたものだった。

部屋の中央をまるく開け、床にチョークでペンタグラムの線を定規を使って引いた。

明かりを消し、呪文をとなえる。
「ダークサイドの神よ、私のために願いを聞いてください。私はささげものを約束するものです。それのかわりにダークサイドの恩恵を懇願するものです。ガス田はあきらめましょう。毒ギョーザも、うやむやにしましょう。あなたの国の民族浄化問題にも目をつぶります。かわりにあの動物をお借りしたいのです。絶滅動物のための基金としてそれ相当の金額は新銀行東京が用意しています」

手に持った小瓶から血をペンタグラムのなかに振りまいた。

部屋の中で何かが起こった。
黒い空気が緊密さを増し、どぶの臭いが立ちこめた。


ペンタグラムのなかで大きな影がもがいていた。

はちみつにまみれた黄色いクマが、五星紅旗のTシャツを着て恨めしそうな目でこちらを見ていた。

「罠にかかったのか。助けてあげられなくてすまない」

何人もの人間が同じような目にあっているのだろう。


引用;Sometimes They Come Back ,'Night Shift',Stephen King,1978

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。