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あの作図

「いや」とシャルラッハが言った。「おれはもっとはかない、もっともろいものを探しているんだ」

対峙しつつその言葉に答えようとして、エリック・レンロックは後ろ手に縛られた縄で自分の腕の皮を挟みうめいた。

「ぼくが目当てだったんだろう? 気づいていたよ。でもそんなに複雑なことをしなくてもよかったのに。アガルマ夫人をまきこむこともなかった。きみらしくもない」

「指桑罵槐なのさ。輪廻の中に生きるものたちには、何も確固としたものはない。親しい人や嫌いな人というのは、果たして決まっているものなのだろうか。敵はいつまでも敵のままでいるとは限らず、ときには友となる。当然、その逆もあり得る。長い輪廻の中ではすべての人はみな等しく敵となって、また友となってきたし、またみな等しくニュートラルな人となってきた。一時的なことに気をとられずに、もっと全体をみてほしい」

彼がその計画の全体でしめそうとしていることに気がつき、レンロックはふたたびうめいた。

「狂犬病対策として犬たちを捕獲しながら、それらを愛護のため生かしておく政策が発表されたとき耳を疑ったが、やはりそうだったのか。世界の文化国家の一員に本気でなろうとしているんだね。あの帝国にくらべれば一桁も二桁も犠牲の民間人の数は少ないが、やってることは同じだ」

「そう、5つの輪の迷路がこれで完成したんだ」

シャルラッハの拳銃が火を吹いた。

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