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あの物語

…人間はすでに死んでしまったので、嫉妬や憎悪というようなマイナスの深い情念は現実には存在できなくなり、もう過去の物語の中の言葉としてしか成り立たなくなってしまった。解釈不可能で残酷で不道徳な作品はそのもの自体として存在することは許されず、(自分とは関係ないものとして)とびきり注意深く異物として排斥されなければならない。現在の物語はあまりに綺麗過ぎて、聖人の寓話のようにみえてくる。誰も止められないため、お約束の結末に収斂してしまう。そして、それを求めている読者がいる。作者は彼らの代表だ。

時代が違えば聖人の寓話も、それが誰もが現実でぶつかったことのある、永遠に解決不能で割り切れない、人生についての根本的な問題であることに思い当たり、身につまされるものもでてきただろう。いまは、登場人物のキャラクターとともに読者がひまつぶしで消費できるよく考えられた死者たちのRPGでしかない。感情移入を促す箇所もあるが、それは体温を失った消毒済みの衛生的で安全なものに加工されている。予備校の現代文解釈問題のように論理的に整合性のある作品が最高のものとされ、余分で多様な解釈が可能なものは操作され忌避される。


新しい聖人の寓話はこうだ。世界で一番「大量破壊兵器」を持つ男が、その威力をバックに、個人の財産拡大のため、異質な民の生命・財産を空から(安全に無機質的に洗練された表現で)徹底的に収奪する。お供の犬・猿・キジとともに。彼は賛美され、お供をした国の教育基本法は改正され、国歌国旗を掲揚斉唱し、歴史的事実を教えることで国を愛する態度が養われ、伝統と文化が尊重される。

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