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あの王様

《ディナーは午後8時半より》

ジャックはテーブルのあいだを縫ってバーに近づいた。
からっぽの棚に何種類もの酒壜が急速に現れ次々と並んでいく。
カウンターの前のスツールに腰を下ろし注文をしてみる。

見当をつけていたところには目標がすでになくなっている。情報が漏れている。目の隅の遠いところで(高い天井のはずれやつい目の前の戸棚の上とかに)そのものが現れてこちらを凝視し消え去る。
手元のマティーニをすするたびにその箇所の命の気配が消える。
神の党ヘズボッラー。
老人や女や子供たちの悲鳴と逃げ惑う物音が部屋のあちこちから聞こえてくる。

ふいになにも聞こえなくなる。
ただホテルの外の吹雪の低いうなり声だけが静かに伝わってくる。

「あなたからお代は頂かないことになっています。マネージャーのお達しでしてね。今日は店のおごりです」

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