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-| 2008年02月12日 |2008年02月13日 ブログトップ

あの健康

「何用あって月世界へ」。ひとことでいいのである。わかる人にはそれでわかるわけだし、わからない人には何百言費やしても意が通じない。最近ではさしずめ、「尊厳死に尊厳はあるか」だろう。彼らに「尊厳」を与えられたものは、ずっと黙ったままだ。

以前、家のなかにも他人がいたほうがいいのではないか、と言った。他人がいれば、ひと悶着あって当然のところが、今はその気配がない。自分の感情のままの言動がすっと通ってしまう。通ってしまうどころか、やんややんやの喝采である。他人など、どこかに消えてしまったのだろう。

利害を同じくする同業者の集まりの中でも昔は知恵者がいて、世間を慮った。
自分たちの利益を追求するほどのことでも、表向きは「患者のため、国民のため」と言い張った。
いまは、へたに受け入れれば利益どころか大損である。「無理を言ってもらっては困る」「ホテルで部屋がなくて宿泊拒否をするようなものだ」と大きな顔をして言えるようになった。以前のような偽善はなくなった。むしろ一点の影もない健康な言い草である。

健康でいることはすでに国民の義務になった。もうすぐ違反したもののために、罰則もできるのだろう。

すなわち健康というものはイヤなものなのである。


あの法案

A;くさい!!
B;え~、このごろ毎日、髪あらってるのに。
A;柔軟な現実主義を、変なイデオロギーを信じている頑迷な人たちが煽ってる。
B;でも、50年ぶりですからねぇ。議論もすれ違ったままだったし。
A;日本の補給艦と護衛艦がインド洋に、シーレーン上に存在しているということが重要なんだ。
B;そうそう、国際社会の中に自分がいる場所をつくっておかなきゃダメですね。先輩の引きこもりをなおしてあげたのも、わたしですからね。
A;あれや飛行機や喫煙者がニガテなのは、密室恐怖といっていい。抽象化された第三者の審級を意識してしまって、自分の内部に世間から孤立した部分を作り、コミュニケーション恐怖が起きてしまった。世界への欲望が大きいぶんだけ、逆(方向)にそういうものも大きくなる。そういうのがこわい。軽くつきあっとけばいいんだ。これは確かにおまえのおかげだ。
B;先輩は先輩のままでいいんですよ~
A;おまえの変態の森には入らない。
B;変態・・わたしはさなぎから蝶になる・・・
A;誰がうまいこと言えと・・・
B;ぎゃぼ~


あの殉死

ぼくは正直言って、直接にこんなことを若年のぼくが言うのは失礼だと思って、言ったことはありませんでした。

常々Oさんの書かれる小説のラディカルな動きにいつも圧倒されてきました。
新しい小説を書かれるときの文体の変化、冒険?というより、もっと切実なものがそのなかにあるような気がするんです。

日本に常住しているぼくなんかは、なにかにつけ意識してしまうんですが、ずっと「外人」、外の人なんですね。たとえ名前を変えても。たぶん溶け込んでしまうことはできない。新しいアイデンティティは得られない。自分の国に帰れ、とか言われるのではないか。いつも、追い詰められている気分になる。

そうなんです。こんどの小説を読んで、その文体について一番に感じたことはそれなんです。「この作家は追い詰められている」。外人になった気分じゃないですか?

デビューされたとき、横光利一と似ているという感想が誰かからありましたけど、ちょうどそういうことになっているんではないかと。

「戦後民主主義」が追い詰められている、「ないよりましだ」じゃないですけど、賛成106票、反対133票なんてそれこそおかしくね?ですよ。政界再編なんかがあったら、賛成200票、反対40票でもぎりぎりだと思うでしょ?ほとんど壊滅状態です。そのことと今度の小説はみごとに重なっていて、しゅんとしちゃったんですけどね。

地球温暖化防止のために、ガソリン税を現在の倍に設定するべきだとか言って、ゴミの分別をやかましく注意する老人たちの冒険みたいなのを書いてほしいなぁ。京都議定書=憲法ですね。

そんなに笑わないでくださいよ。つぼに入っちゃったのかな?


あの救急

・学級討議を始めます。
環境委員の海羊くん。

・今回、ぼくが悪かったと思います。クラスの一部の男子が、まだあんな野蛮な行為をしているので、それを目の当たりにしたら、黙っていられなくなってつい暴力をふるってしまいました。ごめんなさい。でも、以前からぼくが注意していたとおり、汚してはいけないものがあるんだから、いくら自分が楽しいからといってあんな行為を続けるのはよくないと思います。クラスの多数決でやめようと決まったのだから、守ってほしいと思います。

・えーと、犬塚くんは家庭の事情でしかたないということで学校から特別の許可がでてたんでしたね。それときみたち2人が抗議の意味でつきとばした鈴木くんも、ちゃんと学校が認めた範囲でやっていたんですから、ちょっとやりすぎだと思うんですけど、担任の豪先生、どうですか?

・学校は学校の方針があっていいと思うけれど、海羊くんの弱者に対する思いやりも考えてやってほしい。いてもたってもいられなくて、あんな行動をしたんだと思うので今回のことは大目に見てもいいんじゃないのかなぁ。

・でも、もっと話し合いがあってもいいと思うんですけど、なぜ相手を汚らわしいものみたいに見て、物理的な行動で排除してしまうんですか?野蛮な行為だったら、もっとひどいことがいくらもあると思うんですけど、そちらは無視して見ないようにしているとしか思えないんですけど。無差別爆撃とか自動車の排ガスとか、決定的な悪は見ないようにしているんじゃないんだろうか?

・それは、とても難しいことだから、みんなが社会にでてから考えてほしい。

・じゃ、次の議題です。いじめゼロ集会の報告です。今回のスローガンは

「たらいまわしって言うな」

です。人の嫌がる言葉は使わないようにしましょうね。


あの緑豆

問1 傍線部A「その行為は私たちの社会に重大な影響を及ぼす」とあるが、それはどのような変化を私たちの社会にもたらすのだろうか。具体的な説明として最も適当なものを次の1~5のうちから一つ選べ。

1.「もったいない」から「捨てずにリサイクル」という消費者の行動は、結果として商品の消費量を増大させ、国の経済が発展する。リサイクル自体の消費エネルギーも大きく、地球温暖化をますます進行させることになっている。

2.自分の職場で得られた情報により行った取引による利益は、その職場での生涯賃金の額に比例する。職場での経験が豊富になり使える技術が増えるに従い、職場外とのネットワークが構築される。その行為が違法である場合、発覚する者の数は就業年数と反比例する。

3.「生まれる子供がかわいそうだから断種する」という活動により、雑種が減少しブランドとしての商品価値があがるが、種としての多様性が失われる。自分が支配できる人工的で清潔な環境を望むものが多くなった。

4.「偽」というプラカードを自分の船でかかげることにより、自分たちの活動が「ニセモノ」であることを印象づけた。自己愛の投影としての野生生物への同情がテロリズムの方向に進まない場合、「自己否定」という結果に終わるようだ。

5.健康を義務づける国家に対し反健康を標榜する喫煙者たちを「汚れた者」として差別することにより排除し、民族の純血性にこだわり、優生学的に優秀な者たちのみによる共同社会の完成が近づいた。


あの紙幣

彼は自慢話として人妻との浮気の顛末を語りだす。その場をなごやかな雰囲気にするためのエンターティメント、サービスとして語っているのかもしれない。どんな家庭を彼が持っているのかが想像できる。先ほど彼がプレスリーの真似をして奇妙なダンスをし、「ラブミーテンダー」と高い、幼い声で歌っていたとき以上に、わたしたちは困惑する。

あなどれない相手だが、武力ではこちらのほうが何倍も優っている。いざというとき、こちらに頼らねばならないようになっているし、これからもずっとそうだろう。本気になれば迷いなく、こちらが実力を行使することを相手は十分承知している。

あとのふたりはどちらも武力では差があるが、こちらが相手に対してそれを使えないことを知っている。むしろ同等の武力を持つようにして、肝心のところをおさえればいいのだから、将来の方向としてはそうなるのだろう。今は周辺の情況を操作して最悪の事態にならないように、わたしたちのペーパーが共通のものであり続けるように仕向けることだ。
その晩の夢。

追い立てられるようにしてたどり着いた小道はどん詰まりだった。

「方向を変えるべきだね」

と親しげな調子で、カフカの猫のような若い声が、生臭い息とともに上空からふってくる。

小道の先は小さな獣がつくった泥だらけの道が低い木々の間を抜けて続いている。
道の途中の交差しているくぼんだ空き地で獣の太く長く黄色っぽいしっぽだけが活発に見え隠れしている。一瞬、獣の顔が見える。


あの国境

A;新しい趣味をはじめたいって?
B;なにか、実際の生活で、すぐに役に立つようなのがいいんだけど。
A;OK、OK。じゃあ、できるだけ人が真似しない人の物真似。
B;お、いいねぇ。
A;ぼくは、ライセンス持ってますから。
B;そんなのにもライセンスがあるんだ。
A;これはことばによって、まさに自分がその人物になったような気持ちを味わう体験でございます。
B;あ、きみがインストラクターなわけね。
A;リアルにイメージして、その人が言いそうなことをしゃべるだけなんですけどね。
B;適当なのやってみてよ。
A;「あまり考えてない。余計なことを考えずに一番一番。いろんなこと考えていないんだよ」
B;あ、わかる。朝青龍。
A;あ、惜しい。朝青龍のつき人ね。
B;そんなんわかるか。
A;じゃあ、やってみて。
B;「あまり考えてない。余計なことを考えずに…一番一番。いろんなこと考えて…いないんだよ」
A;ほんとに何も考えてないやろ。もちょっと、つき人らしく、なぜぼくなんかに聞くんですか。こんなこと言ってもいいのかなぁ。まさか放送に流さないですよね、困ったなぁ、ほんとにいいのかなぁ、みたいな感じをこめて。
B;難しいなぁ。

A;次は、これ。「ほんとに申し訳ないことです。これから説得してきます」
B;あ、高砂親方。これなら、できるわ。「ほんとに申し訳ないことです。これから説得してきます」
A;惜しい、おまんのおかはん。高校の時、先生に呼び出しくらって、あやまってはる。「ほんとに申し訳ないことです。これから説得してきます」そっくりやったね。
B;そう言われても困りますけどぉ。

A;じゃ、次はこれ。「反抗者にとって不正が悪いものとして認識されるのは、それが不変の正義感にそむくからではなく、圧迫者と被圧迫者を切り放す、暗黙裡の敵意を永続させるからなのである。あらゆる悲劇のクライマックスは、他人のことばが主人公たちの耳にはいらない点にある。」
B;「反抗者にとって…不正が悪いものとして認識されるのは…それが…不変の正義感にそむくからではなく…隣国の圧迫者と…自国の被圧迫者を切り放す…暗黙裡の敵意を…操作されたマスコミによって…自分がよるべなき他国で活動しているまわりに…永続させるからなのである。あらゆる悲劇のクライマックスは… 他人のことばが…閉鎖された環境のため…主人公たちの耳にはいらない点にある。」
A;はい、次いきまぁす。
B;無視すなぁ。

引用;『反抗的人間』,カミュ,白井浩司訳,新潮社,1973.2.5.


あの執行

とうに夜半を過ぎたころ、猫は目をさますと、部屋の隅から2、3歩歩き出し、あくびをしながらのびをする。飼い主はまだ帰ってきていないようだ。ウォーターボウルに口をつけ舌を鳴らす。

猫が立てる音に、部屋の中央のソファの上にねそべっているトイプードルたちがそわそわしだす。

3つの人魂らしきものが、いつの間にか部屋の天井近くに浮かび上がる。
ふたつにわかれ6個になり中空に浮いている。
赤い血の影から派生した黒い斑点が彼らにふりそそぐ。
猫はうまくそれをよけるが、一匹の犬に付着して、紙が燃えるように黒い範囲が広がっていく。犬はふりはらおうと走り回るが、腰のあたりから姿が消えていく。

新しい血の匂いをかぎつけ、猫が警戒の鳴き声をあげる。
6個のぼやけた赤い光がひとつづつ集まりだし、燃える剣の形になる。

あれから56日の時が過ぎた。
剣が空中で振られ、するどい声がする。

「永遠に生きよ!」


あの建国

ここにそのいもいざなみのみことにとひたまひしく、ながみはいかになれる、ととひたまへば、こたへたまはく、あがみはなりなりて、なりあはぬところひとところあり、とまをしたまひき。ここにいざなぎのみことのりたまひしく、あがみはなりなりて、なりあまれるところひとところあり。

かれ、このあがみのなりあまれるところをもちて、ながみのなりあはざるところにさしふたぎて、くにをうみなさむとおもほすはいかに、とのりたまへば、いざなみのみこと、こたへたまはく、しかよけむ、とまをしたまひき。

ここにいざなぎのみことのりたまひしく、しからばあとなとこのあめのみはしらをいきめぐりあひて、みとのまぐはひせむ、とのりたまひき。

かくちぎりて、すなはちのりたまひしく、なはみぎよりめぐりあへ、あはひだりよりめぐりあはむ、とのりたまひ、ちぎりをへてめぐりたまふときに、いざなみのみことまづ、あなにやし、つみのきょかいはじんけんしんがい、とのりたまひ、のちにいざなぎのみこと、あなにやし、がすしつないのゆだやびとはおのづからのいしにてしす、とのりたまひき。

おのもおのものりたまひをへてのちに、そのいもにのりたまひしく、そのしのきよらかさを、おのづからおとしめて、といへるはふさはず、とのりたまひき。おのづからくにのあとおひしすは、なののぞむことなり。いけにへのひつじなり。このこはあしぶねにいれてながしうてき。


あの小浜

今、現在の自分を肯定するために過去が呼び出される。現実はただ一つだけしかありえない。甘く美しい過去を想起することは、現在を嘆いている今の自分のだらしなさをあらわすということにもなっていよう。そう感じながらもその自足の諦観の上に立って過去を美しいと回想しているところに幾分かの悲哀がまじっている。

もういなくなったあの人を偲ぶ気持ちは、共にあった自分をさえ追惜するようなことなのだ。

今日もどこかで血が流れている。あるいは死んでいる。
しかし私は進まなければならない。

私たちの党は常にその人の生まれにかかわらずすべての人に等しいチャンスを与えるために戦ってきた。私の経歴はその象徴だ。私はこうした価値観を維持したい。そうだ、私たちには、できる。

私たちの党?おや、もうわたしは覚えていない。多様な価値観にたいして私は寛容でいよう。相手の政策を批判していても、人間としては理解しあえる。

あの映像が流されたとき、「素手で食肉を扱っている」という批判がすぐに出た。あの国ではモノを使い捨てにするという考えがまだ流通していない。「何回も手を洗っている」という説明が懐かしい声で繰り返される。次は「人間が使い捨てられているのだ」という批判が出てくるのだろうか。どの国のことを言っているのだろう。モノを粗末にしている心が人間を腐敗させていく。

その映像は私のために出現したのだろうか。無意識に押し込めていた部分がその存在を主張したとき、私の感覚がそのことでひるむ。
私の、意識を通じて濾過された記憶を、この感覚が叩く。

引用;佐多稲子,『時に佇つ』,講談社,1979.2.20


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