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あの格調

可憐なかはいゝ台処娘はからだのまはりを石鹸の水だらけにして掃除をします。そのびしょ/\のなかへ平然とすわつてやつてゐます。あゝしただらしのないびしょ/\は、ちよつと我慢のならないしぐさに思ひます。「支配される者同士の激しい暴力は、その源泉が支配者から加へられる暴力にある」と云ふひとがあつたのですが、彼女の暴力的なしぐさに私が腹をたてるのも、私たちがどこか上のはうにゐる支配者からモラル・ハラスメントを受けてゐるからかもしれません。この行く場所を持たない嫌悪感はどう処理したらいいのでせう。

最近問題になつた事件にしても、拡張自殺と云ふのださうですが、ゲイリー・マーク・ギルモアや宅間守のやうに自滅願望があつて犯罪を犯す人たちには、死刑は国家の福祉政策の一部くらひにうつつてゐるのかもしれません。彼らに共通してゐるのは、被害者や遺族へ謝罪をしないことです。戦争で多くの人を殺した場合数字が大きいほど英雄になるやうだけど、それと同じで家族を持つてゐる人や日常を生活している人を殺したと云ふのではなく、彼らにとつて被害者は何人殺したと云ふ数字でしかなかつたのでせう。俺を馬鹿にしたこまつしやくれたガキや昼間からいちゃ/\ちゃら/\してゐる男女、或ひは原罪を背負つて働き蟻のやうに地下鉄で通勤してゐるものたちを排除してやつたと云ふ風に記号として見てゐたのかもしれません。そこまでは私にもわからない。

彼らは数字や記号として被害者たちを排除したのでせうが、彼らが罪を償ふとき彼らは犯した犯罪によつて人間として裁かれ処刑されます。
何某法務大臣は就任以来何人死刑執行に署名したとか云ふ報道があるのですが、そのたびごとにひとりひとりの人間の命ではなく、処分する数字や法律の規定にこだわつている人のおぞましい顔つきが浮かんできます。さうではないのでせうか。


引用;掃除,幸田文全集第4巻,岩波書店,1995.3.27.
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