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あの呪地

きみたちは何も知らないんだから。
と、会社員はひとりごとを言った。

こういうところでは、犯罪がじっさい上、閉ざされた範囲の内で展開するんだ。同じもの同士が盗みあい、ひき裂きあい、殺しあう。自分自身への憎悪の核が暴走する。

向こうの方に小さな灯りがみえるけど、あれがそうなんだろうか。
と、老人がしゃがれた声で言った。

この音は竪琴みたいね。
と、若い女性が言った。

大学生らしい若者は2人でひそひそとしゃべっていた。

暗い影になってスタスタとみんな早足で歩いている。

橋が見えてきた。
後ろを振り返ってはならない。
何にもすがらず、期待せず、自分たちの手によってわがものにしなければいけない。
このときはじめて、いっさいが可能になる。

まわり一面が明るい光で包まれた。


引用;『地に呪われたる者』,フランツ・ファノン,鈴木道彦・浦野衣子訳,みすず書房,1996.9.19.
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